長島有里枝さんといえば、パンクでハードな人というイメージを勝手に持っていたけど、14年ぶりに復刊された「SWISS」を見て、そのイメージが180度変わりました。こんなにやさしくてまっすぐな文章を書き、そして綺麗な写真を撮る人だったのか。
一度書店でパラパラっと見た時は、ふーん、花の写真、しかも文章が付いている、写真集に言葉はいらないな、と思いました。でも「SWISS」は写真集に言葉があるのではなく、写真と文章が対等に存在していて、それぞれが素晴らしく、相互作用もしていて、フォトエッセイとは呼びたくない、それだと軽すぎる、でも純粋な写真集でもない、いままで見たことのない、新しい体験でした。長島さんが5歳の子供とスイスで過ごした3週間を体験できる本。だから書店でパラパラっとめくっただけでは、この本の素晴らしさは分からないのだ。
本の造りが素晴らしい。紙質もプリントも素晴らしい。マットな紙の上に、写真がしっとりと印刷されていて、インクの良い匂いがする。文章は半透明のうすい紙にタイプライターのような文字で印刷されていて、時折、原寸の航空券やメモ書きが挟まれる、贅沢な本。
本当に良い本を手にした時、ページをめくるのがもったいなくて、途中でぱたんと本を閉じ、良い本を手にした幸福感に浸る、それは本が好きな人のあるあるだと思うけど、久しぶりにそういう本に出会いました。