ホンマタカシさんの「その森の子供」は、福島、スカンジナビア、チェルノブイリ、原発事故で汚染された森のキノコを撮っていて、そこにメッセージ性はあるんだけど、そういうのを抜きにして、シンプルにキノコの写真がいいのです。キノコの写真を見て「ゲージュツだ」とか言って、悦に入るような人間は嫌だなと思いますよね、わかります。でもスーパーマリオ世代はキノコ好きでしょ。時々挟まれる静謐な森の写真もよくて、ホンマさんは森でキノコを採取したら、その場に白い紙を敷いて撮影したらしく、紙の上には土や菌糸もバッと散っていて、「そこ」で撮ったというリアルが伝わってきます。
ぼくが小学生の時、家の近くに小さな森(森と呼べるほどの大きさじゃなかったかもしれない、子供の感覚で森だと思っていた場所)があって、よくそこで一人で遊んでいました。どんぐりを拾ったり、良い形をした木の枝を探したり、セミが脱皮する姿を初めて見たりしました。KUMONの教室に行くのが嫌で、そこで暗くなるのをじっと待ったこともあります。そんな森のことはすっかり忘れていたのに、キノコと森の写真を見て、急に思い出しました。