騎士団長殺しはおもしろかったです。とつぜん妻に逃げられたり、暗い穴の中にもぐったり、感性の鋭い少女が出てきたり、村上作品でおなじみの要素たちがオールスターのように登場します。そしてメンシキさんは、グレートギャツビーですよね。
画家の主人公が絵を描くプロセスを結構こまかく描写しているのが面白くて、きっと村上さん自身が小説を書く行為は、こういうことなんだろうなあと、置き換えながら読んでいました。
昔からの村上主義者はたぶん、ねじまき鳥までは好きで、カフカあたりからなんか違うなあ・・・というふうに感じてきたんじゃないでしょうか。ぼく的には「1Q84」はすごく好きでしたけど。カフカ以降、主人公の「ぼく」が、あの「ぼく」じゃなくなっていましたが、騎士団長殺しでは、ひさしぶりにあの「ぼく」が戻ってきた感じです。
村上さんはいつまで、長編小説を書くんだろうか。まだまだ新しい作品を読みたいので、JDサリンジャーみたいに、いきなり隠居しないことを願います。